オーナーからの賃料増額請求の大部分を減額した事案
相談前
- 依頼者の飲食店舗様が、オーナー会社変更に伴い、現行賃料を約20%増額する請求をされました。
- もともとの賃貸借契約書が不明確であり、賃貸範囲が不明確である結果、無断で使用していると主張された部分についても新たに賃料の支払いを求められました。
相談後
- 元所有者との間の契約の内容を主張・立証し、その他、賃料増額を根拠づける事情の変化がないことを主張・立証しました。
- 最終的には、現行賃料を5%増額することで円満解決し、賃貸範囲も明確化することができました。
弁護士のコメント
(1)賃料増減額請求における現行賃料と新規賃料
賃貸人からは、周辺相場が高くなってきているとし、新規賃料を前提に高額な賃料への増額が請求されることがあります。
新規賃料とは、新たに賃貸借契約を締結する際の賃料額を言います。これに対して、継続賃料とは、現在契約関係が継続している当事者間での適正賃料額を言います。
新規賃料は、契約自由の原則のもと賃料相場のなかで高い金額にて設定できますが、継続賃料は、あくまで現行賃料を前提に賃料額の最終合意時点から現在に至るまでの経済事情の変化の割合に応じた分のみ増減額がされることになるため、新規賃料と必ずしも一致しません。
賃料増額における増減額については、さまざまな算定方法がありますが、裁判所においても、専門的な不動評価を行うことは困難であり、専門家である不動産鑑定士による不動産鑑定が重要な資料となります。
賃料増額通知を受けた賃借人は、自らが相当と認める金額を支払えば足り、増額された金額を支払う必要はありません。賃貸人が当該金額の賃料の受領を拒むようであれば、供託をする必要があります。
もっとも、最終的に裁判所により賃料額が決められ、賃借人が支払っていた金額よりも高い賃料額が認定される場合には、その差額に対して10%の遅延損害金を支払うことになる点には注意が必要です。
(2)賃貸借契約書の賃借範囲
とくに1階テナントなどにおいて、オーナー側と口約束で、テラス席や店舗前の空いたスペースなどを利用しており、賃貸借契約の範囲内であるか不明確となっているケースもあります。
オーナーチェンジなどにより、不明確な賃貸借契約書が残っていると、新たなオーナーとの間でトラブルとなる可能性があります。
賃借の範囲含め、関係性がよいオーナーとの間でも賃貸借契約書のリーガルチェックをしっかり行っておくことが重要です。
本件においても、紛争が大きくなってしまった要因としては、当初の賃貸借契約書の内容が不明確であった点があります。
(3)不動産管理サポートプラン
賃料増減額請求の対応は、経済的利益が賃料の差額部分であり、必ずしも大きなものとはいえない反面、交渉・調停・訴訟が予定され、紛争類型として弁護士費用も一定額かかってしまうものであり、かつ、賃料額が合意できない場合には、不動産鑑定が必須となり、鑑定料も一定額がかかってしまうという、費用対効果がよいとはいいがたい紛争類型といえます。
そのため、当事務所においては、顧問プランの一環として、不動産管理サポートをご提供しております。
すなわち、「賃料増減額請求対応特別プラン」は、顧問契約を併用することで、着手金を無料とする形で、賃料増減額が問題となるオーナー様やテナント様をサポートしております。
本件においても、賃貸借契約書以外の契約書のチェックや営業上生ずる諸問題もあったことから、顧問契約の業務量の範囲内で、顧問業務も行い、本件の弁護士費用を抑えて対応することができました。