問題賃借人に対して建物明渡を行った事案

相談前

  • 依頼者は、一棟マンションを所有する会社であり、そのうちの入居者の1名が昼夜かかわらず大音量で音楽やラジオ・テレビを流しており、他の入居者から苦情が絶えない状況でした。
  • 依頼者が委託している管理会社から段階的に注意を行い、警察からの注意もあったものの、改善が見られない状況でした。
  • 法的手続をとるしかない状況となり、管理会社様からご紹介をいただくこととなりました。

相談後

  • 内容証明郵便とその後の架電による交渉を行いました。問題賃借人は担当弁護士に対してもこれまで同様の対応をしていましたが、粘り強く交渉を続けました。
  • 他方で、騒音の状況を保存(ICレコーダー、騒音計、その他記録)し、受忍限度を超える騒音の状況があることの証拠化を行いました。
  • 幸いにして交渉により任意の立退きが実現しました。

弁護士のコメント

(1)騒音を理由とする建物明渡の可否

賃借人は、賃貸人に対し、契約又はその目的物の性質によって定まった用法に従い、目的物の使用収益をする義務があり、これを用法遵守義務といいます。
賃貸借契約書には、他の居住者に迷惑となる騒音等を禁止する条項が規定されていることが多いですが、このような条項の有無にかかわらず、用法遵守義務として、他の居住者に迷惑となる騒音を発生させてはならないといえます。
もっとも、人の生活には一定の騒音の発生は致し方ない面もありますので、賃借人の用法遵守義務違反かどうかを検討するうえでは、社会生活上受忍すべき限度を超えているかどうかが基準とされます。
受忍限度を超える程度の騒音を証拠化するためには、実際の音の種類や状況の保存(ICレコーダー)や、騒音計による音量の証拠化、頻度や継続性、時間帯の証明のため、複数回の記録化をするなど、地道な作業が必要となります。
建物明渡請求が認められる程度の立証は困難が伴いますが、本件においては、上記のような証拠化をしっかりできたことにより、任意の交渉にて明渡を説得できた事例といえます。

(2)他の入居者に対する責任

本件では直接問題となっていませんが、賃貸人の目的物を使用収益させる義務には、他の賃借人に対して、平穏な生活を営むことができる環境を提供する義務も含まれていると考えられています。
そのため、受忍限度を超える騒音を発生させている賃借人を放置してしまうと、他の賃借人から、賃貸人の義務違反を問われて損害賠償請求を受けてしまうおそれもあり、不動産オーナーとしては、適切に対処をする必要があります。

(3)不動産管理サポート

本件は、当事務所と顧問契約をしている不動産管理会社様から、不動産オーナー会社をご紹介いただき、不動産オーナー会社様と委任契約のうえ業務にあたった事例です。
当事務所においては、不動産管理会社様向けに、顧問プランの一環として、不動産管理サポートをご提供しております。
すなわち、委任契約は不動産オーナー会社様との間になりますが、不動産管理会社様との顧問契約における顧問割引を適用し、不動産管理会社様のお客様である不動産オーナー会社様にもメリットがある形で委任契約をすることが可能です。

menu