下請会社から当初の契約金額を超える高額な報酬額を請求された事案

相談前

  • 建設業を営む会社が、下請会社との間で請負金額を見積書ベースで合意していたところ、これを超える大幅な請負報酬を請求され、訴訟提起されました。
  • 下請会社の主張としては、着工日前日に大幅な報酬額増額に当方が応じたとするもの、追加変更工事が多数あったとするものでした。

相談後

  • 報酬額の合意が主たる争点となったところ、契約締結前・契約締結時・契約締結後の各間接事実について、詳細に主張しました。
  • 訴訟序盤は裁判所より敗訴ベースで和解勧試されていたところ、尋問において、客観的証拠との整合性をアピールし、それまでの裁判所からの和解案の内容と正反対の、勝訴ベースで和解することができました。

弁護士のコメント

(1)建設業界における契約書類

建設工事においては、契約締結に際して法定事項を記載した請負契約書を作成することが必要です(建設業法19条)。
しかしながら、実際上は、見積書や発注書ベースで着工することも非常に多く、特に、追加変更工事は、現場の口頭のみのやり取りで着工に至ってしまうことも珍しくありません。
また、見積書や発注書についても、契約条件を交渉しながら、複数枚の見積書が存在し、どの見積書が最終合意であるのかわからないというケースもあります。
契約条件の交渉についても、口頭のみでやり取りされていることも多いですが、業務内容や報酬額の合意は、契約締結前・契約締結時・契約締結後の客観的な資料を中心に整合的なストーリーにて裁判所を説得する必要があります。

(2)裁判官の異動と尋問

裁判官は、裁判の公平性を保証したり、多様な経験を積むため、概ね2年程度にて全国を異動しています。
そのため、訴訟の途中で、裁判官が交代することも一定程度あります。
裁判官も人それぞれであるため、裁判官の交代にて訴訟の流れが変わることも肌感覚としてはやはりあると言わざるを得ず、証人尋問前に裁判官が交代することも一定程度あります。
一般に、証人尋問までに、主張整理が行われているので、裁判官は8割程度、心証(判決をする場合の判断)を固めていると言われていますが、証人尋問の成果により、裁判官の心証が変わったと感じる案件も実は少なくありません。
本件においても、ちょうど裁判官が交代したタイミングということもありましたが、証人尋問前後で、裁判所からの和解案が正反対となり、証人尋問が奏功した事案でした。

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